コーチとコンサルタント、師匠・師範との違いとは?

 実は私は、日本語の「コーチング」という言葉の持つイメージには、かなり長い間、違和感を覚えていました。

 怪しい響きですよね?特に私の年代に近い皆さんだと、そう感じる方が多いのではないでしょうか?

何年も腑に落ちなかったコーチングという概念

 10年以上も前のことになりますが、私は、CTIのマスター・コーチによるコーチの認定書をいただきました。関連書籍にもたくさん目を通し、トレーニングも積んで、それなりに学んだつもりです。

 でも、どこか腑に落ちなかったのです。

 当時学んだことを今振り返ってまとめてみるなら、「クライアントが自ら成長するための選択をし、行動することを促すためのスキルセット」ということになりますが、でも何かが欠けているような気がしたのです。

 それが何なのか、そのヒントに思い至ったのは、何年も経ってからです。

 日本には師匠師範と呼ばれる方々がいますよね?何年(あるいは何十年)もかけて学び身につけるような日本の芸や武道の場合には、教える立場の方々をコーチとは呼びません。

スポーツには欠かせないコーチの存在

 みなさんは、師匠や師範という言葉からは、どのようなイメージが思い浮かぶでしょうか?

 私的には、「お手本を示す人達」で、生き方そのものまでがお手本になっているような、そんな方々です。

 そこに気づいてからは、コーチというのは、「何か得意なこととコーチングのスキルとが組み合わさって成立するもの」だと、考えるようになりました。

 例えば野球のコーチであれば、得意なことと言える程度には、野球をした経験があるはずです。

 なので、例えば野球を始めて間もない子供たちに対しては、もちろんインストラクター(指導者)としての役割「も」担うことができるわけですね。

 コーチに必要なスキルセットの中で大きな位置を占めるのは、もちろん「引き出す力」ですが、それだけでは不十分で、コーチをする分野に関する知識や経験に加えて、コーチとしての生き方そのものまで含めたことがプロのコーチに必要なのではないか、という考え方になったわけです。

 でも、まだどこか腑に落ちない部分がありました。

 というのは、この考え方は、その昔に学んだ「コーチは、コンサルタントとは異なり、その分野の専門的な知識・経験は不要」ということと、異なるように思えたからです。

道あるところに師匠あり、ゴールあるところにコーチあり

 コーチングという言葉に怪しさを感じてしまう理由は、「異文化の慣習を強引に自分達の文化にあてはめようとしているからではないか」と気づいたのは、最近のことです。

 「お手本を示すことができない人が、なぜ指導的な立場になれるのか?」というのは、私達日本人なら誰でも考えることだと思います。

 でも、コーチは指導的立場の人ではありませんし、コーチングには、日本的な師弟関係が入り込む余地はありません

 指導するワケではないのに、なぜクライアントの成長に資することができるかというと、それは「クライアントが本来持っている力を引き出す」ためのスキルセットを持っているからです。

 西洋の英語圏文化には、「まずはゴールを決めて、そこから逆順に考えて行動を選択しましょう(Think backwards)という社会文化的な基本的なスタンスがあります。多くの人達が楽しむスポーツにも、文字通りのゴールがありますよね?このような環境下では、ピタリとコーチングがはまります。

 対して、師匠や師範は、「長い道のり、まずは見て学び取りなさい」というのが、何かを身につけさせようとするときの基本スタンスです。日本では、それが普通のこととして意識の中にしみ込んでいますから、異質なコーチングが怪しく見えるのは、当たり前のことだったワケです。

コンサルティングは、知識・経験を共有だけど…

 コンサルティングという言葉には、コーチングのような怪しさは感じられないと思います。理由は、どちらの文化にも「専門家」という共通した概念があるからです。

 そうはいっても、コンサルティングは、一方通行的な知識・経験の提供ではありません。余談になりますが、コンサルティングは、クライアントが取り組んでいる課題やその目的・背景などなどについて、クライアント側からの共有(やはり引き出す力が必要)がなければ成立しないものです。

 なのでコンサルティングは、学校教育的なティーチングとは大きく異なります。

解決策を実施するのは自分たち

 また、コンサルティングを行う中から出てきたアイディアや具体案の実施にまで、コンサルタントが当事者として関与することは無いのが通常です。

 コンサルティング業務に含めて考える方が日本にはまだ多いと聞きますが、そうするとパートナーあるいは請負いの立場になってしまい、第三者としての視点を失ってしまうことになりかねないからです。

 このように考えると、コーチングもコンサルティングも入口が異なるだけのことで、結果を出すために判断・行動するのは、あくまでクライアント側にあるという点では共通していることがお分かりいただけると思います。

あなたは、『あなたのxxx』の専門家である

 「コーチがアドバイスをすることはあまり無い」という事は、どこかで耳にしたことがあるかも知れません。

 私自身のコーチングも含めて確かにそうなのですが、それは、クライアントのことに関する専門家は、クライアント自身だからです。例えば、クライアントが会社の経営者だとすると、「その(←ここが重要)会社経営の」専門家は、クライアント自身であって、他の誰でもありませんよね。

 同じように、クライアントの人生についてであれば、そのことを最も良く知っているのは、親兄弟や友人ではなく、コーチでもありません。他でもない、本人なのです。

 このことこそが、私的には、コーチとしての基本スタンスです。

 なので、クライアントのビジネスや人生につて、軽々にアドバイスをするはずがないワケで、だからこそコーチは、クライアントをありのまま受け入れるトレーニングを積むのです。

 このあたりのことについては、小冊子『初めてコーチをお試になる皆さまへ(pdf 全12ページ・無料)』にまとめてありますので、コーチングに興味はあるけど未体験という方にお勧めしています。

 

Similar Posts

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください