◆ 異文化との遭遇
「あ!、これ異文化だ!」
私にとっては、実はとてもハッピーな瞬間だったりします。異文化だと気付くと、その相手に対する理解が深まったと思えますし、なにより外の目から見た自分たち日本人の姿に気付かされるからです。
ニセコの温泉によく通っていた頃に気付いた異文化が、手ぬぐいです。日本人的には、障害がある方は別として、ほとんどの人が手ぬぐいをしぼることができますよね?
いつからしぼることができるようになったのかなんて、覚えていませんが、でもちゃんとできる。
お箸の使い方も、似たような感じだと思います。
お箸の場合は、日本人も西欧人のほうも、使うことができないと日本食を食べるときに困ることになるのは、お互いにわかっている(←ここが重要)ので、何の問題も起きません。
というのは、お箸を使うことに慣れていなければ、その場で「教えてほしい」と躊躇なく言えますし、日本人側としても、西洋人向けにはナイフとフォークを予め用意しておくことだってできます。
では、手ぬぐいの場合は?
これ、しぼることができないと、日本では、温泉などの公衆浴場に入ったときに困ったことになります。想像できますよね?でもそのことをお互いに分かっていないため、ややこしいことになります。
まず、手ぬぐいをしぼるという多くの日本人にとっては「普通のスキル」は、世界共通のものではありません。西欧だけではなく、アジア圏でも同じようなのです(全ての国の人に聞いたわけではないので、断定はできません)。
すると、外国人客が多い温泉や公衆浴場では、どうなるかというと?
◆ 全員が当然知っていることと勘違いすると…
試しに、今度温泉や銭湯に行くことがあったら、外国人向けの案内をながめてみて欲しいのです。目につくのは、「手ぬぐいをしぼることができる」ことを前提として、書かれたものではないでしょうか?
ニセコでは外国からの観光客は、「手ぬぐいは持たずに」浴室に入ってくるわけです。西欧人だけではありませんよ。中国や韓国からの観光客も同じです。私、話しかけてちゃんと確認しましたから(笑)。
で、手ぬぐいを持って入ってきて、ちゃんと使っている人は、私が会話した人は全員が全員、日本人と結婚していました(まあこれは、ニセコという土地柄もありそうです)。
予想するに、手ぬぐいが絞れることの必要性も含めて、奥様に丁寧に教えてもらったのだと思います。
◆ いつの間にか身についている常識みたいな事≠世界標準
思うのですが、自分たちがいつの間にか自然に身につけた習慣や行動あるいは考え方って、それが全世界共通な当たり前な事だと思い込んでしまうことがあるのではないでしょうか。
それは危ないです。手ぬぐいの場合でいうなら、「外国人は入浴マナーが悪い」なんて非難をしてしまうことになりますし、それが高じて「外国人は嫌いだ」なんてことになりかねません。
べちゃべちゃになった脱衣場の床を見て嫌な思いするのは、それは誰でもそうでしょう。でもそれは非難されるべきことでしょうか?
そうでは、ありません(キッパリ)。手ぬぐいや雑巾をしぼることを日常的に行うのは、水が豊富な日本だからこそ、自然と身につけるような生活習慣になっているわけで、そうではない人達にマナーが悪いとレッテルを貼ってしまうのは、不公平というものです。
もうひとつ加えるなら、北米での私の経験ですが、生徒が学校の掃除をすることはありません。つまり、手ぬぐいや雑巾を絞るということが、普段の生活習慣(つまりは文化)にはなかっただけのことなのです。
◆ 生活習慣が異なるのは外国人だけか?
さて、実は私がお伝えしたいのはここからです(前置きが長くてスイマセン)。
外国人は、自分たちとは文化が異なるという意識をうっすらとでもお持ちの方、多いと思います。そのような場合には、「脱衣場がべちゃべちゃ」→「だから外国人は嫌い」という、短絡的なことにはならないと思います。
では、ここで問題です。
もしその人が、手ぬぐいを絞ることができない日本人だったら、ニセコで会った外国人のように、丁寧に教えてもらえたかというと?
多分そうはならずに、「非常識な人」として、片づけられてしまいそうです。
でもここで考えてみてほしいことは、現代のお若い方々って、そもそも湯舟にはつからずに、シャワーだけという人も多いですよね?
すると、手ぬぐいや雑巾を絞れないまま大人になって、なんの不自由もしない環境で生活してきた人が日本にいても、不思議でもなんでもないということには、なりませんか?
非常識だと相手を非難することは簡単です。でも、その人が生活してきた背景的なことが自分と異なれば、異なった常識を持っていることのほうが、むしろ自然なことなのです。
ならば、何かにつけ『非常識と思うな、異文化と思え』という姿勢でいるほうが、『自分のほうが正しいというこだわり』に陥りにくいと、私は考えるのですが、いかがでしょうか?