ライブ動画は、
テレビ文化とは正反対だった

◆ 次々と登場するライブ動画配信サービス

 ソーシャルメディアの使われ方が変わり始めています。プリクラ文化を経由した大人達は、今ではライブ(生放送+録画)で、『自撮り動画』をインターネット上にシェアする、そんな時代になりました。

 ライブ配信というとニコ生(2008年に一般に開放)やツイキャス(2010年運営開始)というイメージの方が多いようですが、今では、DeNAが運営する SHOWROOM(2014年9月に一般開放)、 アメブロを運営するサイバーエージェントによるtakusuta (2016年8月開始)、 LINE による Line Live といった大手企業も続々とこの分野に参入。これらに加えて、ソーシャルメディア大手のフェイスブック(2016年5月に一般開放)やツイッター(ライブ配信はPeriscope 2015年3月開始)も、ライブ配信機能を提供し始めています。また YouTube は、2013年12月にライブ配信機能を一般に開放しています(ただし現時点では、基本的にはパソコンからのみ)。

 ライブ動画(ストリーミング)の最大の特徴は、なんといってもその双方向性にあります(左の画像は、Periscope)。

 ライブ配信に『参加』する視聴者が受け取るいわば『体験感』は、一方的に送られてくる画像や文章でのやり取りにはなかったものです。逆に、送り手側としては、ソーシャルメディア=匿名メディアという感覚に、疑問符がつき始めているようです。

 ネットマーケティング先進国のアメリカでも、ライブ動画が広く使われはじめたことにより、従来のfunnel model (漏斗モデル)に大きな影響を与え始めているようです。送り手と受け手との間の距離感が、旧来のテレビやラジオによるものとは、異次元といえるほど大きく異なるからです。

 目に留まる大きな変化としては、「顧客サービスこそが、最も重要な営業活動である」という考え方へのシフトで、顧客サービス部門と営業部門とを統合できるのではいかと提案するコンサルタントが、出始めていると聞きます。

 そこで重要になってくるのが、コミュニティー作り。そして、そのためのツールのひとつとしてライブ動画を役立てようとしているようです。

 アメリカでは大手企業の中にも、スナップチャットというライブ感覚に近いプラットフォームを取り入れて、顧客との距離感を縮めようとする試みが始まっています。

◆ ライブ配信をやってみて、逆にテレビを理解できた、かも(笑

 ライブによる動画配信のもうひとつの特徴は、透明性です。

 ライブ動画には、編集の余地がありません。失敗やハプニングも含めて、送り手の気持や感情までもがダイレクトに伝わるのがライブ配信。というよりも、ライブ配信に参加する側も、そうしたことを求めているように思えます。

 合理性を徹底的に追及して最大公約数を計算せざるを得ないテレビ放送では、こうしたことは体験できないからです。ハナシは飛躍しますが、先日のアメリカ大統領の選挙結果も、こうした世相の反映だったのではないかと、自分的には考えています。

 日本では、ライブ動画というだけで眉をしかめる方がまだ多いかもしれませんが、先入観はちょいと横に置いておいて、いくつか覗いてみることをお勧めします。実は私自身も、ニコ生というと、俗に言うアラシが跋扈するコワイ場所といったイメージしかなかったのですが、とんでもない間違いだったと最近になって気付きました。

 現在のライブ配信の状況は、テレビの深夜番組と変わらないようなものから、ライブ配信らしいコンテンツを持ったものまで無秩序に混在しているのですが、これはホームページが世の中に出てきた時も同じでした。

 ライブ動画は、まだまだ始まったばかりのメディア。なので『ただ今お試し期間中』程度の感覚で気軽に接してみるが、異文化コミュニケーター風です。

 もしかすると、発信する側としても観る側としても、「こんな場所があったのかぁ」と思えるような、居心地の良いコミュニティーに出会えるかも知れませんよ。