スマホを持った女性を取り囲む楽しそうなグループ

スマホが通訳に変身で英語学習は不要になる?

機械翻訳から AI 通訳へ

 ちょうど2年前のことですが、Skype に通訳機能が登場したという記事を投稿しました。

 今度はGoogle 社から、通訳機能付きのイヤフォンを発売するというニュースが流れてきました。

 余談ですが、英語では “translation(翻訳)” という言葉を使って紹介されていますが、アメリカでは、通訳者も翻訳者も “translator”とするのが一般的で、日本やヨーロッパのように区別されていません。実際は、デモンストレーションされている通りで、人と人との間に入って言葉を置き換えているので、日本語的には通訳です。

 通訳・翻訳を仕事にしてきた私としては、「ついにここまで来たか」というのが正直な感想ではあります。

 思い出すのは、1990年代の後半だったと思いますが、機械翻訳システムの開発現場に入ったことがあります。当時の印象としては、実用化までは相当に時間がかかるだろう、ということでした。

 最近、コンピュータによる翻訳能力が急激に伸び始めたのは、AI(人工知能)開発の分野で大きなブレイクスルーがあったからなのだそうです。

 以前は、「機械」翻訳といわれていたように、人間が翻訳するための論理構造をあらかじめコンピュータに与える(人がプログラムする)ことで、翻訳しようとしていたのですが、AIを使うようになったためにコンピュータのほうがが学び始めたのだそうです。

 このことによって、急速にこの分野が進歩し始めたというのが現時点での私の理解です。

通訳機能は、Google アシスタント機能の一部

 さて、今回発表されたこのイヤフォンですが、これは通訳専用に開発されたわけではなく、Google アシスタントを使うために開発されたもののようです。

 新製品の発表イベントでは、アシスタントに何をさせることができるのかの目玉として、通訳機能が紹介されたということですね。

 イヤフォンとスマホの間はブルートゥースで接続されているのでワイヤレスです。右側のイヤフォンに指で触れることで、持ち歩いているスマホのアシスタント機能に話しかけることができるようになっています。

 対応言語は、40カ国語で、訳に必要な時間は1秒ほどだそうですから、旅行などの際に、通訳がそばにいるのと変わらないような安心感を得られそうな予感です。

 ただし、現時点ではどうやら Google 社製のスマホ Pixel を使わなければならないようなのですが、実はこのスマホ、昨年モデルから日本での販売が見送られています。

 もしかすると、日本語化の対応が遅れているのかもしれません。もちろんこの時代ですから個人輸入でも入手できますが、日本語への通訳機能を試すには、暫くはじっと我慢ということになりそうです。

英語を学ぶ必要性はなくなる?

 さて、持ち歩きができる通訳ツールが登場したとなると、苦労して語学の学習をしなくても良いのではないか、ということになりそうです。

 日本語に対応するのも時間の問題でしょうし、こうなってくるとGoogle謹製のスマホだけではなく、専用のツールで持ち運び可能なものも登場しそうな雰囲気です。

通訳・翻訳のイメージ画像
そもそも英語を学ぶ目的とは?

 でも、単に言葉が通じることと、お互いにわかり合えるということとは、必ずしもイコールでは、ありません。

 このことは、日本人同士のコミュニケーションでも同じですよね?相手が話す内容を「文字面」で捉えていているだけでは、お互いに理解し合えるとは限りません。

 同じ内容のことを伝えるのであっても、その場その場の状況にあった言葉選びが必要で、そこを間違えてしまうと伝わることも伝わらないということは、誰もが経験することです。

 で、このことは、言語をまたぐことで拡大してしまうのです。わかりやすい例を挙げるなら、ジョークがそうです。

 英語のジョークって、たとえ言っていたことを理解できたとしても、私たち日本人の多くは笑うことができません。言葉の意味は理解できても、何がおかしいのかわからないからです。

語学学習の目的を捉え直そう

 私の年代に近い皆さんなら、英語といえば、将来使うかどうかも分からないのに、「なぜ面倒な文法と単語の丸暗記をやらなければならないのか」と感じていた方が多いはずです。

 当時は、社内のコミュニケーションは英語という会社が日本国内に登場するとは、思いもよりませんでした…。

 時代は変わり、英語を繰ることができるアドバンテージが目に付くようになり、改めて英語を学び直そうとお考えの方が多いようです。

 もしあなたもそうならば、昔ながらの学校英語的な学び方は忘れてしまったほうがよさそうです。せっかく登場した便利なツールを使わない手はありませんから。

 すでに実用レベルになっている翻訳ツール(文字ベース)については、逆にこれを英語学習に役立てている方もいらっしゃいます。AI通訳のほうも、そんなふうに役立てることができるかも知れません。

 また、学ぶ目的も、英語の勉強は言葉を学ぶというよりは、「その言語の背景にある文化や考え方を知ることを楽しむ」と捉え直すことを、異文化スタイルとしては提案したいです。

 身近なところで考えるなら、例えば旅行であれば、つなない言葉であっても身振り手振りを添えてなんとかコミュニケーションするほうが、旅行としては楽しいように思いますし、記憶にも残るはずです。

 もっと極端に考えるなら、通訳ツールを使ったコミュニケーションで、恋人ができるワケありませんよね?

 というワケですので、今後AI通訳や翻訳がどこまで便利になるかは予想もつきませんが、語学の学習を止めてしまうのは勿体ないと思います。

 最後に、なまじ言葉が通じることによる誤解も発生しやすくなります。この点については、言語と異文化のページ(こちら)に例をあげて書きましたので、参考まで。

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